阿佐ケ谷駅でサクラを発見!?

阿佐ケ谷駅でサクラを発見!?

いつも使うおなじみの阿佐ケ谷駅。 改札を抜けて、ホームへ向かう階段の手前。ふと目にとまったもの。 これは……、サクラ? 幹がどうみてもテープの芯だけど、枝の分岐が妙に凝ってて、適当に作った感じがしない。 けっこう時間がかかった工作物のにおいがする。 でも駅の構内に置かれているものにしては、個人の手仕事の雰囲気があふれている……。 すごく気になる……。 ひとまず撮影した写真をエンジンズメンバーにも共有したところ 「前から阿佐ケ谷駅構内の工作物は、やたらと気合が入っていると思っていた」との声が。 どうやら、このサクラ以前にも、気になるモノが設置されていた様子。 今年はエンジンズも、Beans阿佐ヶ谷内にある「いつもの阿佐ヶ谷マップ」でサクラ情報を集めていたこともあり、よいタイミング。 ぜひ調査したい! ダメ元で、JR阿佐ケ谷駅さんに取材を申し込んだところ、OKのお返事をいただき、喜び勇んで取材に出かけてまいりました。

制作者登場! 醍醐(だいご)さんに聞いてみた

通されたのは駅長室。 歴代の駅長さんのお名前や、阿佐ケ谷駅の歴史にまつわるパネルが掲げられています。 取材の申し込みをした時に、サクラを作ったのは「醍醐さん」という方で、例のサクラのことを「オブジェ」と呼んでいるとのこと。 オブジェ……。確かにオブジェかも。 これをオブジェと呼ぶところに、すでに愛を感じる。 醍醐さん、どんな方なんだろう? 駅長室のソファーでドキドキしていると 「おまたせいたしました」 いらっしゃいました! 写真左側が、サクラを作った醍醐さん。 右側が助役の菅井さん。

早速質問を投げてみた!

醍醐さんも菅井さんも、制服姿でわかる通り、JR阿佐ケ谷駅で働いている駅員さん。お仕事の時間をぬって、取材を受けてくださいました。ありがたい……。 早速、お伺いしてみたかったことを訪ねてみました。 ――今日はよろしくお願いいたします。サクラは醍醐さんがお一人で作られたのですか? 「はい、そうです。」 ――どのくらいの日数がかかっているのですか? けっこうこだわって作ってあるように見えました。 「だいたい、2週間ほどかかっています。ただ、業務の間にちょっとずつ行っていたので、2週間です。1日の中で、手をつけられるのは1時間から2時間ほどでした」 ――作る時は設計図など書いてから作るのですか? 「いえ、作りながら考えて組み立てていきます」 ――もともと工作などはされていたのですか? 「うーん、嫌いではなかったです。もともと、モノを作るということに馴染みがあったかもしれません」 以前、別の工作物があったとの情報があったので、うかがってみると他にもイカ、カニ、なまはげの名前が挙がってきました。 「もともとJRで北陸フェアがあり、ポスターなどの掲示物に合わせて、何か飾りをつけようとなった際に、(醍醐さんに)なにか作ってよ!と依頼をしました」 と菅井さん。 イカとカニは、菅井さんをはじめ他の社員さんが醍醐さんに依頼したもの。それ以降のなまはげやサクラの作品は、醍醐さんの自主製作なのだとか。お仕事の一環とはいえ、好きでなければできない仕事ぶりだ。

気になってた! 幹の正体

はっ! 一番気になってたことを聞かなくてはっ。 ――そういえば、サクラの幹の部分って、あれなんですか。ガムテープの芯でしょうか? 「あ、あれは特急券の紙が巻いてあるロール芯です」 特急券のロール芯! よくよく観察すると普通のガムテープの芯より分厚い。そして幅を見るとたしかに特急券くらい。 「そもそも、あるものでなんとなく作るという感じなので、幹を作ろうと思った時に、たくさんあった特急券のロール芯を再利用しました。ビニール紐などを利用して組み上げてあります」 「困ったのは、途中でロール芯が足りなくなってしまったことです。数をまとめるのに、すこし時間がかかってしまいました」 サクラを作るために色紙やガムテープなどは購入したものの、基本的にその時に余っているもので工作物は作られているのだそう。 でも、たまたまあった物を使ったとは言うものの、あのロール芯の丸みがサクラの幹らしさを出している気がする。あれは、素材を活かすために選ばれた、サクラというテーマだったんじゃないだろうか。 なにより、駅員さんが作ったオブジェが、特急券のロールでできてるって、すごくいい。 とても作家性がある。 うーん、醍醐さん。素敵です。こんなところでアーティストに出会えるとは思っていませんでした。

意外性ある? 阿佐ケ谷駅の中の仕事

――手仕事感がありつつも、クオリティの高さや気合いの入り具合から、てっきり広報のような部署があって、専門に作っている社員の方がいるのかなと思ったりもしていたのですが……。 「飾り付け専門という者はおりません。阿佐ケ谷駅に勤務しているのは全部で20名ほど。通常業務の傍らで、飾り付けなどの作業をしております」 そして出されてきたのがこちら。 「絵が得意な社員がいるので、頼んで描いてもらいました。阿佐ヶ谷の七夕祭りのボンボンをイメージしています」 ――おお、かわいい! サクラの作品にも乗っかってたキャラクターですね! 「男の子がタコのタコガヤくん。女の子がクラゲのアサクラさんです。阿佐ケ谷駅の公式キャラクターということで、JR本部からも了解をもらっています」 ――缶バッチ、素敵です。これはどこかで販売しているのですか? 「現在、阿佐ケ谷駅の窓口で特急券を購入した方へプレゼントとして差し上げています」 知らなかった……。 今後は窓口で特急券を購入することを固く誓いつつ、お話をうかがうと、この絵を描いたのも普段は窓口業務をしている方とのこと。 この時点で、自分の中にあったJR=「まじめに決められた仕事をしっかりやる組織」というイメージしかなかったところに、まじめにお仕事しつつも、どうやら、中の人の個性や得意なことも尊重してもらえる雰囲気がありそうだぞという、新たな発見が生まれて、感動し始める自分がいました。 安全や安定を大事にした「電車の運行」という業務と、駅を利用する人たちに、楽しさを提供する「キャンペーン」のお仕事。 両方の仕事を、働いている人の特技でもって、フレキシブルに行き来しているところに、ああ、普段利用しているJRの駅の中の人も、当然ながら、ひとりひとりに個性があって、ちゃんとそれを生かす場所が職場の中にあるんだなあということに、嬉しい気持ちに。 「同じ路線のターミナル駅に所属する社員が300人ほどなのに対して、阿佐ケ谷駅は社員数の少ない小さな駅です。ただその分、全員の顔が見えるというチーム感や、地域に密着していこうという意識、小さい駅ならではのよさがあると考えています」とは菅井さん。 特に阿佐ケ谷駅は「チーム意識」がある駅とのこと。飾り付けに気合いをいれたり、オリジナルのキャラクターを作ってみたり、阿佐ケ谷駅で働いていることで、自分の駅として盛り上げようとしてくれていることが、エンジンズとしてはすごく嬉しく思えます。 さらに醍醐さん、駅の利用者の声を聞くための、レスポンスボードも個人的に作成。 楽しんで作ったものが他の人の役に立ち、場をよくしていくことにますます感動! 最後は、醍醐さんと菅井さんに、カニとなまはげを持っていただき、サクラの前で記念撮影。 こうやって手に持ってもらうと、カニもなまはげも、かなり大きい! 次は夏に向けて、何を作るか思案中の醍醐さん。七夕祭りとコラボしたようなものなども検討していたり、次は何が現れるのかワクワクしています。 今後も駅構内に現れるはずの工作物に期待大です! ますます阿佐ケ谷駅への愛着が深まる取材になりました。

文 乙川貴絵 写真 齊藤志野歩